新聞が順調に「殺されて」いる件

こちらの記事を見て、随分前に書いた記事を思い出した。


今週のThe Economist:誰がしんぶん殺したの?


こうして見ると、Economistの予想は大体的を射ていたようで、発行部数の低下、編集部へのコスト削減、インターネット広告への積極的進出、といった流れはここ2年間で全く変わっていない。ただ、この2年でだいぶ「勝ち負け」がはっきりしてきたように見える。


いわゆる「勝ち組」の筆頭はFinancial Times。他の新聞が軒並み発行部数を減らす中でむしろ発行部数を増やした数少ない新聞。しかも値上げを敢行した上での話だから、親会社は笑いが止まらないだろう(開業以来最高の業績を出しているはず)。WSJはその一方で若干部数を減らしている。まぁ、世界の経済紙としては FT > WSJ は評価として定着した感があるので(筆者の主観)、これはしょうがないのかもしれない。


一方ジリ貧なのが多くの一般紙。上の記事でもNYTがネット広告に積極的に乗り出した、という指摘があったが、こちらの記事を見れば分かるとおり、発行部数が急減している以上、当然の戦略だろう。というか、ほかに打つ手がない。上のエントリーで「がんばるくらいじゃどうにもならない」と指摘されてように、詰め将棋で長考しても無意味なのである。将棋台ごとひっくり返すような手を思いつければいいんだろうが、それは天才の仕事だ。


そして、一般紙どころではなくほとんど終了の気配が漂うのが大衆紙。そもそも、スポーツの記事やゴシップなどは確かに需要はあるが、要は適当に記事を書いておけばそれでいい=供給が容易、ということで、記事の付加価値が低い。新聞版の駄菓子のようなものだ。本サイトのエントリーでも書いたが、この分野はフリーペーパーの独擅場と化している。イギリスの大衆紙Sunなどは発売価格を5割引にして、DVDとかも積極的につけて売ってみたり、涙ぐましい経営努力をしているのだが、それでも発行部数は1年で5%以上減。NYT以上に悲惨な結果になってしまった。


やはり、今の体制のまま生き残れるのは記事の質で勝負できる一部の経済紙+一般紙、それとシブステッドのようにネットビジネスに軸足をうまく移した新聞だけではないだろうか。それ以外は、それぞれ右翼系左翼系のNPOやら宗教団体やら政治団体やらに買われて、そこの広報誌として機能していくということになるのかもしれない*1。広報誌といえば聞こえは悪いが、もともと政治的主張を表に出す新聞は結構多いのだから、紙面の内容を大きくいじらずとも適応は可能なのではないかと思う。そして、そういう新聞社のコスト削減の受け皿として、「記事の卸売業者」としての通信社の存在感が増していく、というのが、一番ありそうなシナリオ、と。確かに、どう考えてもあんまり救いのある内容にはなりませんなぁ。

*1:または、The Guardianのスコット・トラストのようなファンドを自前で用意する。資金力のありそうな日本の新聞なら可能かもしれない。この辺りは上のエントリーで書いた。